鋼構造・溶接計算ツール
完全溶込み溶接強度照査ツール
開先溶接継手を自動照査
設計手法(許容応力度設計法/限界状態設計法)と設計基準を切り替えて、完全溶込み開先溶接継手の引張・せん断・合成応力を自動で照査します。
🔧 ASD/LSD両対応
📐 道路・鉄道基準切替
🖼️ 開先断面図を自動描画
⚡ 計算過程を表示
Glossary
用語解説
本ツールで使用している専門用語を、溶接設計実務の参考としてまとめました。
A. 溶接継手・開先に関する用語
- 完全溶込み溶接(完全溶込み開先溶接)
- 開先(グルーブ)を設けた継手で、板厚の全断面にわたって溶着金属を溶け込ませる溶接。母材と同等以上の強度をもつ溶着金属を用いれば、継手の許容応力度を母材と等しく扱える。橋梁の主要部材の突合せ継手など、高い強度・信頼性が求められる箇所に用いられる。部分溶込み溶接やすみ肉溶接とは照査方法が異なる。
- 開先(グルーブ)
- 溶接のために母材の端部に設ける溝の形状。本ツールではV形・X形・K形・レ形を選択できる。完全溶込み溶接では、開先形状にかかわらず有効のど厚は母材板厚 t と等しくなるため、形状は施工性や変形管理の観点で選定する。
- のど厚 a
- 溶接部の強度計算上、有効に働く溶接の厚さ。完全溶込み開先溶接では のど厚 a=板厚 t(板厚が異なる場合は薄い方)として扱う。すみ肉溶接ではサイズから換算した値を用いる点が異なる。
- 有効長さ l
- 溶接部のうち強度計算に算入できる長さ。クレーターやビード端部の欠陥が生じやすい始終端を除いた有効な溶接長さを指す。溶接有効断面積 A はのど厚 a と有効長さ l の積(A=a×l)で求める。
- 溶接有効断面積 A
- 溶接継手が荷重を負担する断面積。完全溶込み溶接では A=t×l(板厚×有効長さ)で算定し、応力度σ・τを求める基礎となる。
B. 応力・照査に関する用語
- 引張・圧縮応力度 σ
- 溶接線に直角方向に作用する軸方向力 N を溶接有効断面積 A で除した値(σ=N/A)。完全溶込み溶接では引張・圧縮で同じ許容応力度を用いる。単位は N/mm²。
- せん断応力度 τ
- 溶接線方向に作用するせん断力 Q を溶接有効断面積 A で除した値(τ=Q/A)。引張・圧縮とは別に許容せん断応力度 τa と照査する。単位は N/mm²。
- 合成応力の照査
- 軸方向応力とせん断応力が同時に作用する場合に、両者を組み合わせて行う照査。本ツールでは基準に応じて (σ/σa)²+(τ/τa)² ≦ 1.2、または √{(σ/σa)²+(τ/τa)²} ≦ 1.1 の形で判定する。個別の照査がOKでも合成照査でNGになる場合がある。
- 検定比
- 作用応力(または作用断面力)を許容値(または設計耐力)で除した比。1.0(合成照査では許容限度)以下であれば安全側と判断する。本ツールでは引張・せん断・合成の各検定比の最大値を総合判定に用いる。
C. 許容応力度設計法(ASD)に関する用語
- 許容応力度設計法(ASD)
- 作用応力度が許容応力度以下であることを確認する設計法。「σ ≦ σa」「τ ≦ τa」を満たすかで判定する、従来から広く用いられてきた手法。本ツールでは道路橋示方書(許容応力度設計法の体系)と国鉄昭和58年版 鋼鉄道橋の基準を切り替えられる。
- 許容引張・圧縮応力度 σa/許容せん断応力度 τa
- 各鋼種・基準で定められた許容応力度。完全溶込み開先溶接の値は母材と同じ値を用いる。例として道路橋示方書ではSS400で σa=140、τa=80 N/mm²(板厚40mm以下・工場溶接)。基準・鋼種・板厚区分により値が異なる。
- 工場溶接・現場溶接
- 溶接施工の場所による区分。品質管理のしやすさから、現場溶接は工場溶接より許容応力度を低減する規定がある(鉄道では現場溶接は工場溶接の90%が原則)。本ツールの内蔵値は工場溶接を前提としている。
D. 限界状態設計法(LSD)に関する用語
- 限界状態設計法(LSD)
- 各種の安全係数(部分係数)を用いて、設計断面力が設計耐力を下回ること(γi・Pd/Pud ≦ 1.0)を確認する設計法。鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼・合成構造物)令和6年版などで採用されている。本ツールでは入力する断面力を荷重係数等考慮済みの設計値として扱う。
- 降伏強度の特性値 fsyk・fsvyk
- 構造用鋼材の引張降伏強度(fsyk)およびせん断降伏強度(fsvyk)の特性値。鋼種と板厚区分(t≦16/16〜40/40〜75)ごとに定められる。これを材料係数γsで除して設計降伏強度 fsyd・fsvyd を求める。
- 設計耐力 Nud・Qud
- 溶接継手が安全に負担できる軸方向・せん断方向の耐力。完全溶込み開先溶接では Pjud=(fsyd・Σa·l)/γb の形で算定し、部材係数γbで除して求める。設計断面力との比で照査する。
- 部材係数γb・構造物係数γi・材料係数γs
- 限界状態設計法で用いる部分安全係数。材料係数γsは材料強度のばらつき、部材係数γbは耐力算定式の精度、構造物係数γiは構造物の重要度に応じた割増しを表す。本ツールではR6年版の一般値(γb=1.05・γi=1.2・γs=1.05)を用いている。
E. 鋼種・設計基準に関する用語
- SS400・SM490・SMA490
- 橋梁・鋼構造で用いられる代表的な構造用鋼材。SS400は一般構造用圧延鋼材、SM490は溶接構造用圧延鋼材(強度が高い)、SMA490は溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(耐候性に優れる)。許容応力度・降伏強度は鋼種ごとに異なる。
- 道路橋示方書・同解説 Ⅱ鋼橋編
- 道路橋の設計に用いる基準。許容応力度設計法の体系では完全溶込み開先溶接(工場溶接)の許容応力度を母材と同じ値とする。平成29年版以降は部分係数設計法へ移行している。
- 鋼鉄道橋設計標準(国鉄 昭和58年版)/鉄道構造物等設計標準(令和6年版)
- 鉄道橋の設計に用いる基準。昭和58年版は許容応力度設計法(原典値はkgf/cm²表記でSI換算が必要)、令和6年版は限界状態設計法(部分係数)を採用している。本ツールではこの両者を設計手法の切替に対応させている。
- 板厚区分
- 同じ鋼種でも板厚が増すと降伏強度が低下するため、t≦16・16〜40・40〜75(mm)などの区分ごとに強度を定める考え方。限界状態設計法では入力板厚から区分を自動判定する。
【注意事項】
本解説は概略理解を目的としたものです。実際の設計では各設計基準の原文を必ず参照し、技術者による最終判断を行ってください。