設計用土質定数とは
土木構造物の基礎設計や土留め設計を行うとき、地盤の強さや変形のしやすさを数値で表す必要があります。これを設計用土質定数といいます。
代表的な土質定数は以下の4つです。
| 記号 | 名称 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| φ(ファイ) | 内部摩擦角 | 度(°) | 砂や礫が崩れにくい角度。大きいほど強い地盤 |
| C(シー) | 粘着力 | kN/m² | 粘土が粘り着く力。砂質土では原則 0 |
| E₀(イーゼロ) | 変形係数 | kN/m² | 地盤の変形しにくさ。大きいほど沈みにくい |
| γt(ガンマt) | 単位体積重量 | kN/m³ | 土 1m³ あたりの重さ |
📌 ポイント
土質定数は、本来は土質試験(三軸圧縮試験など)で直接求めるのが理想です。ただし、試験コストや時間の問題から、実務では地盤調査で得られるN値から推定する方法が広く使われています。
N値とは
N値は、標準貫入試験(SPT)で得られる値です。地盤調査のボーリングで、63.5kgのハンマーを76cmの高さから自由落下させ、サンプラーを30cm打ち込むのに必要な打撃回数を数えたものです。
N値が大きいほど地盤が固く、設計上有利な数値となります。おおよその目安は以下のとおりです。
| N値の目安 | 砂質土の状態 | 粘性土の状態 |
|---|---|---|
| 0〜4 | 非常に緩い | 非常に軟らかい |
| 5〜9 | 緩い | 軟らかい |
| 10〜19 | 中程度 | 中程度 |
| 20〜29 | 密 | 硬い |
| 30〜49 | 非常に密 | 非常に硬い |
| 50以上 | 非常に密(岩盤相当) | 固結した硬質粘土 |
⚠️ 注意
N値はあくまで貫入抵抗の指標であり、地盤の強さを直接示すものではありません。土質(砂質土か粘性土か)によって同じN値でも意味が異なります。必ずボーリング柱状図の土質区分と合わせて判断してください。
内部摩擦角 φ の求め方
内部摩擦角 φ は、砂や礫などの砂質土の強さを表すパラメータです。粘性土(粘土・シルト)では通常 φ = 0 として扱います(全応力解析の場合)。
道路系でよく使われる計算式(仮設構造物工指針ほか)
φ = √(15N) + 15 ≦ 45°
出典:道路土工 仮設構造物工指針(H11)ほか ※ 現行の道路橋示方書(H14以降)では σ’v を考慮した式が採用されています
この式はシンプルで使いやすく、一般的な道路構造物の設計で広く使われています。N値が大きくなるほど φ も大きくなりますが、上限は45°に制限されています。
鉄道系(鉄道構造物等設計標準)の計算式
鉄道系では、有効上載圧 σ’v(地盤の深さに応じた土の圧力)を考慮した計算式を使います。これは、同じN値でも深い位置にある土の方が締め固められているという考え方を反映したものです。
φ = 1.85 × (N / (σ’v/100 + 0.7))^0.6 + 26°
出典:鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物(H12)
※ σ’v の最小値は 50 kN/m²
| 区分 | 計算式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 🛣️ 道路系 | φ = √(15N) + 15 | 計算が簡単。σ’v を考慮しない。仮設構造物工指針ほかで広く使用 |
| 🚃 鉄道系 | φ = 1.85×(N/(σ’v/100+0.7))^0.6 + 26° | σ’v を考慮した精緻な式。深い地盤ほど φ が大きく算定される傾向がある |
粘着力 C の求め方
粘着力 C は、粘性土(粘土・シルト)の強さを表すパラメータです。砂質土・礫質土では C = 0 とします。
道路系(道路橋示方書)の計算式
C = 0.8N (kN/m²)
出典:日本道路公団「設計要領第一集 土工編(H22.4)」中間値採用
鉄道系(鉄道構造物等設計標準)の計算式
N ≧ 2 の場合:C = 100N / 16 (kN/m²)
N < 2 の場合:C = 0.35 × σ’v (上限 12.5 kN/m²)
出典:鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物(H12)
📌 N<2(非常に軟らかい地盤)の扱い
鉄道系では、N値が非常に小さい(N<2)軟弱地盤の場合、C = 0.35×σ’v という式を使います。ただし上限は 12.5 kN/m² です。これは、極めて軟らかい粘土では N 値だけでは粘着力を正確に評価できないためです。
変形係数 E₀ の求め方
変形係数 E₀ は、地盤の変形しにくさを示す値です。基礎の沈下計算や地盤反力係数の算定に使います。
| 区分 | 計算式 | 出典 |
|---|---|---|
| 🛣️ 道路系 | E₀ = 2800N (kN/m²) | 道路橋示方書・同解説 下部構造編 |
| 🚃 鉄道系 | E₀ = 2500N (kN/m²) | 鉄道構造物等設計標準(H12) |
⚠️ 道路系と鉄道系は係数の定義が異なる
道路系(E₀ = 2800N)と鉄道系(E₀ = 2500N)は係数の数値こそ近いですが、定義・設計体系が異なります。それぞれの基準に対応した後続の換算式とセットで使う必要があるため、必ず適用基準を確認したうえで使用してください。
有効上載圧 σ’v の考え方
鉄道系の φ 計算では、有効上載圧 σ’v(地表から対象層中央までの地盤の重さ)を求める必要があります。
計算の考え方は以下のとおりです。
- 地下水位より上の層:σ = γt × h(湿潤単位体積重量 × 層厚)
- 地下水位より下の層:σ’ = γ’ × h(水中単位体積重量 × 層厚)
- 各層の値を積み上げて σ’v を算出する
水中単位体積重量:γ’ = γt − γw
γw(水の単位体積重量)= 10.0 kN/m³
σ’v = Σ(γt × h) 地下水位以浅 + Σ(γ’ × h) 地下水位以深
※ σ’v の最小値は 50 kN/m²(鉄道標準)
📌 地下水位の影響
地下水位が浅いほど有効上載圧 σ’v が小さくなり、結果として鉄道系で算定される φ も小さくなります。地下水位の設定は結果に大きく影響するため、ボーリング柱状図をもとに慎重に設定してください。
道路系・鉄道系の違いまとめ
道路系(道路橋示方書)と鉄道系(鉄道構造物等設計標準)の計算式の違いを一覧でまとめます。
| 項目 | 道路系(道路橋示方書) | 鉄道系(鉄道構造物等設計標準) |
|---|---|---|
| 内部摩擦角 φ(砂質土) | φ = √(15N) + 15 ≦ 45° (仮設構造物工指針ほか) |
φ = 1.85×(N/(σ’v/100+0.7))^0.6 + 26° (σ’v 最小 50 kN/m²) |
| 粘着力 C(粘性土) | C = 0.8N(kN/m²) | N≧2:C = 100N/16 N<2:C = 0.35σ’v(上限12.5) |
| 変形係数 E₀ | E₀ = 2800N(kN/m²) | E₀ = 2500N(kN/m²) |
| σ’v の考慮 | なし | あり(φ・C算定に使用) |
計算ツールの使い方
これらの計算を手作業で行うのは手間がかかります。土木設計Naviでは、N値を入力するだけで φ・C・E₀ を自動算定できる無料ツールを公開しています。
- 道路系・鉄道系を切り替えて計算可能
- 複数地層を一括入力(最大10層)
- 地下水位を考慮した σ’v を自動計算
- 計算過程を表示して検算が可能
✅ まとめ
N値から土質定数を推定する際は、以下の3点を押さえておきましょう。
- 土質区分(砂質土・粘性土)によって使う式が変わる
- 道路系と鉄道系で計算式が異なる。適用基準を確認すること
- 重要な構造物では土質試験結果を優先し、N値からの推定値はあくまで参考値として扱う