粘着力(C)とは?N値推定・試験・設計への活用を解説

粘着力(C)とは

粘着力(C:コヒージョン)は、土が外力に関わらず持つ固有のせん断強度です。単位は kN/m² で表します。粘土の粒子が持つ電気的な引き合う力(表面電荷)や土の構造によって生まれる強さで、上に乗る荷重(垂直応力)の大きさに関係なく一定値を持つのが特徴です。

土のせん断強度はクーロンの式で表されます。

τf = C + σ × tan φ

τf:剪断強度(kN/m²) C:粘着力(kN/m²) σ:剪断面上の直応力(kN/m²) φ:内部摩擦角(°)

この式の「C」の部分がまさに粘着力です。σ(垂直応力)がゼロのとき、つまり上に何も乗っていなくても土がせん断に抵抗できる力がCです。粘土の塊が縦に切っても崩れずに立っていられるのは、このCがあるからです。

📌 Cのイメージ

乾いた砂は手でつかんでも形を保てませんが、粘土は手で握ると形を保ちます。この「握っても崩れない力」が粘着力Cのイメージです。粘土粒子は板状で表面に電荷を持っており、水分を介して粒子同士が引き合うことで粘り強さが生まれます。

砂質土と粘性土での扱い方の違い

粘着力Cは、主に粘性土(粘土・シルト)の強度パラメータとして使います。土質によって扱い方が大きく異なります。

土質 Cの扱い φの扱い 理由
粘性土(粘土・シルト) C > 0(主役) φ = 0(全応力解析) 粒子間の粘着力が強度の主体
砂質土・礫質土 C = 0(原則) φ > 0(主役) 粒子間に粘着力は期待しない
砂礫(洪積・固結層) C > 0(特定条件のみ) φ > 0 続成作用による粒子間結合

⚠️ 砂質土で C > 0 とする場合の注意

砂礫層や礫混じり砂層でCを見込む場合は、「続成作用(Diagenesis)」による粒子間セメンテーションが生じた地層に限られます。一般的な沖積砂礫層では C = 0 が原則です。洪積層・【D】記号の地層・関東ローム層下位など、50,000年以上の時間経過を経た地層のみ対象となります。

N値からCを推定する方法

実務では土質試験を省略してN値からCを推定することが多いです。適用される設計基準によって計算式が異なります。

道路系(道路橋示方書)の計算式

C = 0.8N (kN/m²)

出典:日本道路公団「設計要領第一集 土工編(H22.4)」中間値採用
適用条件:粘性土(粘土・シルト)のみ。砂質土では C = 0

シンプルな比例式で、N値が大きいほどCも大きくなります。ただし適用できるのは粘性土のみで、砂質土には適用しません。

鉄道系(鉄道構造物等設計標準)の計算式

鉄道系では、N値の大小によって計算式が切り替わります。

N ≧ 2 の場合:C = 100N / 16 (kN/m²)

N < 2 の場合:C = 0.35 × σ’v (上限 12.5 kN/m²)

出典:鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物(H12)
σ’v:有効上載圧(kN/m²)

📌 N < 2(超軟弱地盤)の扱い

N値が2未満の超軟弱な粘性土では、N値だけでは粘着力を正確に評価できません。このため鉄道系では有効上載圧σ’vを使ってCを算定します。ただし上限は12.5 kN/m² に制限されており、これを超える値は採用できません。超軟弱地盤では一軸圧縮試験など実測値を優先することが望ましいです。

道路系と鉄道系の計算式の違い

区分 道路系(道路橋示方書) 鉄道系(鉄道構造物等設計標準)
計算式 C = 0.8N(kN/m²) N≧2:C = 100N/16
N<2:C = 0.35σ’v(上限12.5)
特徴 シンプルな比例式。N値のみで算定可能 N値に応じて式が切り替わる。超軟弱地盤ではσ’vを考慮
N値 道路系 C(kN/m²) 鉄道系 C(kN/m²)
1 0.8 σ’v × 0.35(上限12.5)
2 1.6 12.5
5 4.0 31.3
10 8.0 62.5
20 16.0 125.0
30 24.0 187.5

⚠️ 道路系と鉄道系でCの値が大きく異なる

同じN値でも道路系と鉄道系では算定されるCの値が大きく異なります(N=10で道路系8.0に対し鉄道系62.5)。これは基準の体系や設計思想の違いによるものです。必ず適用する設計基準を確認してから計算してください。基準を間違えると大幅な過大・過小設計につながります。

室内土質試験によるCの直接測定

重要な構造物の設計や、N値推定式が使えないケースでは、現地でサンプリングした試料を使って室内土質試験を実施し、Cを直接求めます。代表的な試験方法を解説します。

① 一軸圧縮試験

一軸圧縮試験は、最もシンプルで経済性の高い試験です。円柱状の試料に側圧なしで上下方向の荷重を加えて破壊させ、そのときの圧縮強度(qu)を測定します。粘性土のCは以下の式で求まります。

C = qu / 2 (ただし φ = 0)

qu:一軸圧縮強度(kN/m²)

一軸圧縮試験で得られる変形係数E₅₀も設計で使用します。また、試験結果として応力〜歪み曲線が得られるため、試料の乱れの程度も確認できます。

⚠️ 一軸圧縮試験の注意点

一軸圧縮試験はφ = 0 を前提としています。砂分を多く含む粘性土(塑性指数PI < 30)では実際はφ > 0 となり、C = qu/2 では剪断強度を過小評価することがあります。また、試料に乱れがあると過小なquが得られ過大設計の原因になります。応力〜歪み曲線のパターンを確認し、乱れが疑われる試料は採用しないことが重要です。

💡 腐植土(泥炭)への一軸圧縮試験の適用

腐植土(泥炭)は非排水条件で試験するのが普通ですが、繊維質泥炭では試験中に排水を伴うため非排水条件を満たせないことがあります。また、泥炭は圧縮歪みが大きくなっても応力がほぼ直線的に上昇するため、強度の判断が難しくなります。泥炭地盤ではサウンディングなど別の手法で粘着力を推定するケースも多いです。

② 三軸圧縮試験

三軸圧縮試験は、C・φを同時に精度よく求められる最も信頼性の高い試験です。試験条件(UU・CU・CD)によって得られる値の意味が異なり、設計目的に応じた条件を選ぶことが重要です。

試験条件 得られる値 粘着力Cの扱い 主な用途
UU(非圧密非排水) Cu(φu ≒ 0) Cu = C(全応力) 盛土直後など短期安定の検討
CU(圧密非排水・全応力) Ccu・φcu Ccu = C 圧密後の短期強度の検討
CŪ(圧密非排水・有効応力) C’・φ’ C’ ≒ 0(砂質系)またはC’ > 0 長期安定・有効応力解析
CD(圧密排水) CD・φD CD ≒ 0(砂質系)またはCD > 0 砂質土の長期強度の検討

💡 粘着力と試験条件の関係

飽和した粘性土をUU条件(非圧密非排水)で試験すると、破壊包絡線はほぼ水平(φu ≒ 0)になり Cu = C が得られます。これは「外力を加えた直後は間隙水が逃げないため土粒子が荷重を負担できず、全荷重を間隙水圧が受け持つ」ことを表しています。この状態を全応力条件といいます。

③ 直接せん断試験

直接せん断試験でも破壊包絡線からC・φを求めることができます。垂直応力(σ)を変えて複数回試験し、せん断強度(τf)との関係を直線でフィッティングすることで切片がC、傾きがtanφとなります。

一軸圧縮試験・三軸試験と比べた特徴は以下のとおりです。

試験方法 得られるC 費用・手間 信頼性 向いている土質
一軸圧縮試験 C = qu/2(φ=0前提) 安い・簡単 中程度 乱れの少ない軟弱粘性土
三軸圧縮試験 C・φを同時取得 高い・手間あり 高い あらゆる土質
直接せん断試験 C・φを同時取得 中程度 やや低い 乱した試料も可

④ 試験結果から設計用Cを決める流れ

複数の試験結果をそのまま設計値にするのではなく、以下の流れで設計値を確定します。

  1. 破壊包絡線・C-tanφグラフの作成:試験結果をプロットし包絡線を描く
  2. N値推定値との整合確認:大きなかい離がないか確認する
  3. ヒストグラム評価:複数試験の頻度分布を確認し代表値を決定する
  4. 安全側への判断:ばらつきが大きい場合は小さめの値を採用する

💡 実務メモ:逆算法によるCの検証

斜面がすでに安定している現地形を対象に、安全率Fs = 1.0(または1.05〜1.10)を仮定して逆算するとC・φの組み合わせが求まります(逆算法)。特に洪積砂礫層や礫まじり砂層でCを見込む場合は、逆算法による検証が有効です。一般に、崩壊地や肌落ちしている斜面、地形変換点が明確な箇所では逆算法が精度よく適用できます。

設計でCを使う場面

粘着力Cは、以下のような設計計算で使います。

設計の種類 Cの使われ方
法面の安定計算 すべり面のせん断抵抗力の算定(特に粘性土地盤)
擁壁の安定計算 主働土圧・受働土圧の算定(粘性土の場合)
直接基礎の支持力計算 支持力公式のC項として使用
軟弱地盤の安定検討 盛土の安定計算・円弧すべり計算
土留め工の設計 粘性土の受働土圧・底盤安定計算

たとえば軟弱地盤上の盛土設計では、基礎地盤の粘性土のCが最も重要なパラメータになります。Cを過大に評価すると安全率が高く算定されて危険側の設計になるため、試験値に基づいた適切な値の設定が求められます。

Cを使うときの注意点

① 全応力条件と有効応力条件を意識する

粘性土のCは、排水条件によって意味が大きく変わります。

  • 全応力条件(短期・施工直後):間隙水が逃げる前の状態。C = Cu(一軸圧縮試験・UU三軸試験で測定)
  • 有効応力条件(長期・圧密後):間隙水が逃げた後の状態。CŪ試験・CD試験のC’を使用

斜面崩壊を豪雨時に検討する場合は有効応力解析が正しく、全応力解析では間隙水圧がマイナス(負圧)として安全側に評価されてしまうことがあります。設計目的に合わせて適切な条件を選択することが重要です。

② 砂質土でCを見込む場合の条件を守る

砂礫層でCを見込む場合は、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 調査報告書に「洪積世」と記載されている地層
  • 調査報告書に【D】記号で表されている地層
  • 関東ローム層等・洪積ローム層より下位にある地層
  • 内部摩擦角φより急な斜面傾斜をしている地層

⚠️ 安易なC見込みは危険

道路橋示方書に「洪積砂礫層においては5 tf/m²程度の粘着力を有する場合がある」と記載されていますが、これをそのまま引用して設計に反映するのは危険です。どのような地層でこの値が適用できるのかを現地踏査・地層確認を経て慎重に判断する必要があります。

③ N値推定式と試験値が大きくかい離する場合

N値からの推定値と試験値が大幅に異なる場合は、以下の原因を確認してください。

  • 試料の乱れ(サンプリング時・試料整形時)
  • 試験条件の不適切な選択(UU条件なのにφ ≠ 0 など)
  • 地層境界の判定誤り(複数地層の試料が混在)
  • 泥炭などの特殊土質への通常式の誤適用

まとめ

粘着力Cは、粘性土の強度を表す最も重要なパラメータです。

  • Cは「垂直応力に関わらず土が持つ固有のせん断強度」。粘性土の主役パラメータ
  • 砂質土では原則C = 0。砂礫でCを見込む場合は地層の続成条件を確認する
  • 道路系は C = 0.8N(シンプル)、鉄道系はN値で式が切り替わる
  • 道路系と鉄道系で値が大きく異なるため適用基準の確認が必須
  • 精度が求められる場合は一軸圧縮試験・三軸圧縮試験・直接せん断試験でCを直接測定する
  • 全応力条件(短期)と有効応力条件(長期)を設計目的に応じて使い分ける

✅ 設計で使うときのチェックポイント

① 粘性土か砂質土かを土質区分で確認したか?
② 道路系・鉄道系どちらの式を使うか確認したか?
③ 全応力条件・有効応力条件のどちらで設計するか決めたか?
④ 砂礫にCを見込む場合は続成条件を確認したか?
⑤ 室内試験結果がある場合、試験条件が設計目的に合っているか確認したか?

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