
「工程表を作っておいて」と言われたものの、バーチャートとガントチャートの違いも曖昧なまま、とりあえずエクセルを開いてしまった——若手のころ、そんな経験はありませんか。
工程表は種類ごとに「何を見せるための書類か」がまったく違います。この記事では、土木工事で使う5種類の工程表について、それぞれの役割と使い分け、そして公共工事ならではの注意点までを整理します。
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工程表はなぜ種類を使い分けるのか
工程表は、工事の着手から完成までの作業内容と時期を一覧にした書類です。土木工事共通仕様書では、受注者は工事着手前に施工計画書を提出することとされており、その記載事項のひとつに工程表が含まれます。つまり公共工事では、工程表は「作れば便利な資料」ではなく提出が前提の書類です。
ここで押さえておきたいのが、工程表の種類は「縦軸と横軸に何を取るか」で決まるという点です。横軸が時間なのか進捗率なのか、縦軸が工種なのか出来高なのか。ここが違うだけで、読み取れる情報がまったく変わります。
| 種類 | 縦軸 | 横軸 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| バーチャート | 工種 | 時間 | いつ何をするか |
| ガントチャート | 工種 | 進捗率 | 今どこまで進んだか |
| グラフ式 | 進捗率 | 時間 | 予定と実績の差 |
| ネットワーク式 | —(結合点と矢線) | — | 作業の順序・依存関係 |
| 出来高累計曲線 | 出来高累計率 | 工期 | 全体の進み具合の妥当性 |
同じ現場でも、全体管理はバーチャート、発注者説明は出来高累計曲線、というように併用するのが実務では一般的です。
① バーチャート工程表(最も一般的)
縦軸に工種、横軸に時間をとり、各作業の期間を横棒(バー)で表します。横線式工程表とも呼ばれ、土木・建築の現場で最も広く使われている形式です。作業員から発注者まで、誰が見ても直感的に理解できるのが最大の強みです。
- 長所:作成・修正が簡単。いつからいつまで何の作業をするかが一目で分かる
- 短所:作業同士の関連が表せず、遅れが全体にどう響くか(クリティカルパス)が読めない
- 向いている工事:小〜中規模で、作業の依存関係が比較的少ない工事
土木工事では、月を上旬・中旬・下旬の3区分で管理する形式がよく使われます。日単位ほど細かすぎず、月単位ほど粗くない、ちょうどいい精度になるためです。
② ガントチャート工程表
縦軸に工種、横軸に進捗率(達成度%)をとり、各作業が今どこまで進んでいるかを表します。見た目がバーチャートに似ているため混同されがちですが、横軸が「時間」か「進捗率」かが決定的な違いです。
「いつからいつまで」という日程は読み取れないため、単独で使うことは少なく、バーチャートと組み合わせて進捗確認用に使われます。施工管理技士の試験でもこの違いは頻出なので、覚えておいて損はありません。
③ グラフ式工程表
縦軸に進捗率、横軸に日程をとり、予定線と実績線を折れ線で描きます。バーチャートとガントチャートの性質を併せ持ち、各作業の進捗と時間軸を同時に把握できるのが特徴です。
情報量が多く便利な反面、工種が増えると線が重なって読みにくくなります。主要工種だけを抜き出して描くのがコツです。
④ ネットワーク式工程表
丸(結合点)と矢線を使い、「Aが終わってからBを始める」といった作業の順序・依存関係を表します。工期に最も影響する経路=クリティカルパスを正確に把握できるのが最大の利点です。
どの作業が遅れたら工期全体が押すのかが数値で分かるため、大規模で複雑な工事には欠かせません。ただし作成には専門知識が必要で、修正の手間も大きいため、小規模工事ではバーチャートで十分なことがほとんどです。
実務では「全体はネットワーク式で組んでクリティカルパスを把握し、現場に貼るのはバーチャート」という使い方が現実的です。
⑤ 出来高累計曲線(バナナ曲線)
縦軸に出来高の累計進捗率、横軸に工期をとり、上方許容限界と下方許容限界の2本の曲線を引きます。その形がバナナに似ていることから「バナナ曲線」、S字状の形から「Sカーブ」とも呼ばれます。
読み方はシンプルです。
- バナナの範囲内:概ね順調
- 下限を下回る:工程遅延。人員・重機の増強を検討
- 上限を上回る:先行しすぎ。工程に無理がないか、品質を犠牲にしていないか確認
出来高(完成した金額ベースの割合)で進捗の妥当性を示すため、土木工事や公共工事の進捗管理で特に重宝されます。発注者への月次報告や、遅延理由を説明する資料としても有効です。
工事の規模・目的別 使い分け早見表
| こんなとき | おすすめ | ひとこと |
|---|---|---|
| 小〜中規模・依存関係が少ない | バーチャート | 作りやすく共有しやすい定番 |
| 施工計画書に添付する | バーチャート | 発注者・作業員の双方が読める |
| 作業ごとの進捗を細かく確認 | ガントチャート | 達成率を一目で把握 |
| 予定と実績の差を管理 | グラフ式 | 折れ線で乖離が見える |
| 大規模・複雑・依存関係が多い | ネットワーク式 | クリティカルパスが分かる |
| 発注者への進捗説明 | 出来高累計曲線 | バナナ曲線で妥当性を示す |
迷ったらバーチャートで問題ありません。実務で作られている工程表の大多数はこの形式です。
土木工事で工程表を組むときの注意点
出水期を必ず織り込む
河川工事では、おおむね6〜10月の出水期に河川内の工事ができません。この期間を工程表上で明示せずに組むと、着工後に必ず組み直しになります。出水期は陸上作業や仮設撤去に充てるか、休工として明記しておきましょう。
積雪期・年末年始も休工として見込む
積雪地域では冬期の土工・舗装工が困難です。年末年始やお盆も含め、実働日数がどれだけ確保できるかを先に数えてから工程を割り付けます。
段階確認・立会のタイミングを入れる
監督職員の段階確認や立会は、こちらの都合だけでは日程が決まりません。工程表に確認ポイントを明示しておくと、事前協議がしやすくなり、待ち時間による工程の間延びを防げます。
施工順に並べ、余裕日を残す
準備工から後片付けまで、工事の流れどおり上から下へ並べます。並行作業は日数の短いほうを上に置くと書き込みやすくなります。最後に数日の予備日を空けておくと、悪天候や手直しに対応できます。
よくある失敗パターン
失敗① 準備工・仮設工を書き忘れる
仮設道路、仮囲い、支障物移転などは工期を大きく食います。本工事だけで組むと、着工直後から遅れが出ます。
失敗② 材料・重機の調達期間を見ていない
プレキャスト製品や特殊材料は納期が数週間〜数か月かかることがあります。発注から搬入までの期間を工程表に入れておきましょう。
失敗③ 養生期間を工程に入れていない
コンクリートの養生や埋戻し前の強度確認は「作業していない期間」ですが、確実に日数を消費します。
失敗④ 作りっぱなしで更新していない
工程表は進捗に合わせて更新してこそ意味があります。月1回は実績を記入し、予定とのズレを確認してください。
失敗⑤ 誰にも見てもらわずに確定した
抜け漏れは自分では気づけません。提出前に上役や職長に目を通してもらうだけで、精度が大きく変わります。
無料ツールでバーチャート工程表を作る
エクセルで罫線とセル結合と格闘する時間は、正直もったいないところです。当サイトの「バーチャート工程表作成ツール」なら、ブラウザ上でマスをクリック&ドラッグするだけで工程バーを引けます。
- 月を上旬・中旬・下旬の3区分で管理。土木の工程表に必要な精度でそのまま使える
- 大分類(土工・構造物工など)と小分類(掘削工・盛土工など)の階層構成に対応
- 月見出しのクリックで休工月を赤く表示。出水期や積雪期を明示できる
- 工種ごとの月別進捗率を入力可能。実線/破線で計画と実績を区別できる
- A4横/A3横で印刷。提出用の工程表としてそのまま使える
- データはサーバーに送信されず、JSONで手元に保存。続きから編集できる
使い方は4ステップです。
- 開始・終了の年月を選び、工事名と作成者を入力する
- 大分類・小分類の行を追加し、工種名を記入する
- マスをクリック/ドラッグして工程バーを引く
- 用紙サイズを選んで印刷、またはJSONで保存する
よくある質問
Q1. バーチャートとガントチャートはどちらを作ればいい?
施工計画書に添付したり現場に掲示したりする工程表は、バーチャートです。ガントチャートは進捗確認用の補助資料と考えてください。単に「工程表」と言われた場合は、ほぼバーチャートを指します。
Q2. 工程表の単位は日・旬・月のどれがいい?
工期の長さで決めます。数か月〜1年程度の工事なら旬(上旬・中旬・下旬)単位が扱いやすく、数週間の小工事なら日単位、複数年にわたる大規模工事なら月単位が現実的です。
Q3. 工程が遅れたら工程表は作り直す?
当初工程表は残したうえで、変更工程表を別に作成するのが基本です。当初と現在を並べることで、どこで何日遅れたかを説明できます。遅延理由の記録にもなるため、上書きせずに残しておきましょう。
まとめ
工程表の使い分けは、次の3点を押さえれば十分です。
- 迷ったらバーチャート。施工計画書の添付も現場掲示もこれで対応できる
- 大規模で依存関係が複雑ならネットワーク式を併用。クリティカルパスを把握する
- 発注者への進捗説明は出来高累計曲線。バナナ曲線で妥当性を示す
そして土木工事では、出水期・積雪期・養生期間・調達期間という「作業していないのに日数を食う期間」を先に押さえることが、実務で使える工程表をつくる最大のコツです。