設計の基本・総則
コンクリート構造物設計の基本となる示方書・基準
2022年制定版で独立した編です。コンクリート構造物の設計・施工・維持管理に共通する基本的な考え方(原則)をまとめています。個別の数値や手順は設計編・施工編・維持管理編で確認し、この編は、それらの前提となる考え方を押さえるときに参照します。
土木コンクリート構造物の設計に関する最も基本的な示方書。断面設計(曲げ・せん断・軸力)、耐久性設計、限界状態設計法の考え方まで体系的に記載されている。土木分野でコンクリート設計を行うすべての技術者が参照する一冊で、他の多くの基準書もこの示方書を基本として参照している。
最新情報:施工編・規準編は2023年制定で、設計編とは制定年が異なります。年号の違う編を組み合わせて使うことになるため、設計図書でどの版を指定しているか確認してください。
コンクリートの製造・運搬・打込み・養生・品質管理など施工全般の基準。設計図書に施工条件を明記する際や、配合設計・品質規格値の設定根拠として参照する。設計者でも施工条件の確認で参照することが多い。
道路橋のコンクリート部材・コンクリート上部構造(PC橋・RC橋の主桁など)の設計基準です。土木学会のコンクリート標準示方書とは別の体系で、道路系構造物のコンクリート設計では、こちらが基本になります。
最新情報:令和7年に改定され、令和8年4月1日以降に新たに着手する設計から適用されます。旧名称は「Ⅲ コンクリート橋・コンクリート部材編」(平成29年版)です。令和7年版では「設計耐久期間」の考え方が新設されています。
プレストレストコンクリート(PC)・プレキャスト・規準
PC構造・プレキャスト部材・試験方法と材料規格の基準
PCの設計・施工の基本を解説した規準。建築寄りの位置づけだが、PC設計の考え方・プレストレス力の算定・損失の計算方法などを体系的に理解するための参考書として活用できる。
プレキャストコンクリート(PCa)部材を用いた構造物について、構造計画から設計・製造・施工・維持管理までの考え方をまとめた指針(案)です(コンクリートライブラリー158)。PCaボックスカルバートやL型擁壁などの既製品を採用するときに参照します。
コンクリートに関する試験方法・材料などの規準類を収録した編です。JISのほか、日本コンクリート工学会など他団体の規格も収録されています。試験方法・材料規格の根拠確認や、設計編・施工編と合わせて参照することで、基準の背景を理解できます。
耐久性・維持管理・補修
既設構造物の点検・診断・補修の基準
既設コンクリート構造物の点検・診断・補修・補強の基本的な考え方を示した示方書。劣化機構(中性化・塩害・凍害・アルカリシリカ反応等)ごとの診断方法と対策工の選定基準が体系的に整理されており、補修設計・長寿命化計画の立案で必参。
道路橋の定期点検(5年に1回、橋長2.0m以上が対象)に関する要領です。点検の方法、損傷の状況の記録、健全性の診断(区分Ⅰ〜Ⅳ)などが定められており、橋梁点検業務・補修設計の発注・積算に関わる業務で参照します。
最新情報:本体は令和6年3月版です。運用の手引きなどの関連資料は更新されることがあります(令和7年5月に更新)。
特殊コンクリート・特殊構造
マスコン・水中コンクリート・鉄筋の定着と継手
大型フーチング・ダム・橋脚など部材厚が大きいコンクリートの温度ひび割れ制御の考え方を示した指針。温度応力解析の方法・ひび割れ指数の算定・低熱セメントの選定など、マスコン対策の設計・検討で参照する。
水中打設を行うコンクリートの設計・施工に関する指針。水中・水際部の基礎工事・ケーソン工事などで水中コンクリートを使用する際の配合・施工方法の基準として参照する。
ご注意:発行から30年以上たっている指針(案)です。実際の設計・施工では、発注者の仕様書や、現在のコンクリート標準示方書での扱いを確認してください。
鉄筋の定着長・継手長・機械式継手の設計基準。コンクリート標準示方書の設計編を補完する形で、複雑な定着・継手の設計条件を確認する際に参照する。配筋詳細の検討で役立つ。
基準書の使い分けガイド
使う基準は、構造物の管理者によって変わる
コンクリート構造物の設計では、土木学会の「コンクリート標準示方書」を思い浮かべがちですが、実際に主に使う基準は、どこが管理する構造物かによって変わります。
1. 基本は、管理者の基準
たとえば、次のように管理者ごとに基準が分かれます。
- 道路橋:道路橋示方書・同解説(日本道路協会)
- 鉄道:鉄道構造物等設計標準・同解説(コンクリート構造物。令和5年1月版)
- 港湾:港湾の施設の技術上の基準・同解説(令和6年4月一部改訂)
- 下水道:下水道事業支援センターの「下水道コンクリート構造物の腐食抑制技術及び防食技術マニュアル」(令和5年3月)などの管理者側の資料
土木学会の示方書を、これらの基準とどう組み合わせて使うかは、発注者の指示によって決まります。
2. 線路の下や河川に関わる場合は、その管理者の基準が先
設計する構造物が線路の下を横断する場合などは、まず鉄道の基準に準拠します(鉄道設計の設計基準・示方書一覧)。新しくつくる構造物は発注元の財産でも、施工する場所は鉄道管理者の用地の下だからです。河川に関わる場合は、河川管理者の基準を確認します(河川・海岸の設計基準・示方書一覧)。
3. 版の違いにも注意
コンクリート標準示方書は、設計編・維持管理編・基本原則編が2022年制定、施工編・規準編が2023年制定と、編によって制定年が違います。道路橋示方書は令和7年に改定され、令和8年4月1日以降に新たに着手する設計から改定後の内容が適用されます。「いつ着手した業務か」で、使う版が変わることがあります。
4. 基準は、勝手に決めずに発注者と協議する
どの基準を使うかは、設計者が自分で決めるものではありません。特記仕様書などで指定されていることも多いのですが、指定がない場合や、複数の基準にまたがる場合は、発注者と協議して決めます。協議で決まった内容は、打合せ記録に残しておくと、後からの手戻りを防げます。
5. 業務は、基準を決めるところから始める
設計業務は、まず「設計基準を決める」ところから始めましょう。管理者は誰か、他の管理者の用地や施設に関わらないか、基準書の名前と版は何か、基準が複数ある場合の優先順位はどうするか、を最初に確認しておくと安心です。