過去10年の必須科目Ⅰ出題テーマを分析【2026年度技術士二次試験・建設部門】

技術士二次試験(建設部門)の必須科目Ⅰは、毎年「社会が直面している課題」をテーマにした論述問題です。出題傾向をつかんでおくことは、効率的な試験対策の第一歩。この記事では、過去10年分(平成27年〜令和6年)の出題テーマを一覧で整理し、繰り返し出題される3大パターンを深く掘り下げます。

📌 この記事でわかること

  • 過去10年の必須科目Ⅰ出題テーマ一覧
  • 繰り返し出題される3大テーマの背景・課題・キーワード
  • 論文に使える具体的な解決策の視点
  • これから出題が予想されるテーマ

必須科目Ⅰとは?(試験形式のおさらい)

まず、必須科目Ⅰの基本的な形式を確認しておきましょう。

項 目 内 容
出題数 2問出題・1問選択
解答形式 記述式(600字詰め×3枚)
試験時間 2時間
問われる能力 問題解決能力・課題遂行能力
対象範囲 建設部門全般にわたる専門知識・応用能力

特徴的なのは「建設部門全般」を対象としている点です。道路・橋梁・河川といった特定の専門分野ではなく、建設・土木業界全体が抱える社会的課題が問われます。国の施策・白書・法改正などの動向を把握しておくことが非常に重要です。

なお、現在の記述形式になったのは2019年(令和元年)からです。それ以前(平成25〜30年)は択一式(マークシート)でした。この記事では現行の記述形式を中心に解説します。

過去10年の出題テーマ一覧

▼ 現行形式(記述式):令和元年〜令和6年

年 度 Ⅰ-1 テーマ Ⅰ-2 テーマ
令和6年(2024) 持続可能で暮らしやすい地域社会の実現(拠点連結型国土) 大規模災害発生後の復旧・復興
令和5年(2023) インフラメンテナンス第2フェーズ(予防保全への転換) 巨大地震・複合災害への対応
令和4年(2022) DX推進による建設業の生産性向上 カーボンニュートラル・脱炭素化
令和3年(2021) 気候変動・激甚化する風水害への対応 循環型社会・低炭素社会・自然共生社会
令和2年(2020) インフラメンテナンス・老朽化対策 地方の中小建設業の担い手確保・持続性
令和元年(2019) 建設分野における生産性向上(i-Construction) 想定を超える大規模自然災害・国土強靭化

▼ 旧形式(択一式):平成27年〜平成30年(参考)

年 度 主な出題分野・キーワード
平成30年(2018) 社会資本整備・インフラ老朽化・働き方改革・生産性向上
平成29年(2017) 防災・減災・国土強靭化・担い手育成
平成28年(2016) インフラメンテナンス・高齢化・地域活性化
平成27年(2015) 国土強靭化・社会資本の戦略的維持管理

※ 平成27〜30年は択一形式のため、記述問題のテーマとは性格が異なります。参考程度にご覧ください。

出題テーマの3大パターンを深掘りする

令和元年以降の出題を整理すると、大きく3つのテーマが繰り返し出題されています。ここではそれぞれのテーマについて、背景・課題の観点・論文で使えるキーワード・解決策の視点まで深く掘り下げます。


① 防災・減災・国土強靭化

出題年:令和元年(Ⅰ-2)、令和2年(Ⅰ-2)、令和3年(Ⅰ-1)、令和5年(Ⅰ-2)、令和6年(Ⅰ-2)
出題頻度:ほぼ毎年いずれかの問題に登場。最重要テーマ

■ なぜ繰り返し出題されるのか

日本は世界有数の自然災害大国です。地震・豪雨・台風・土砂災害が毎年のように発生しており、近年はその激甚化・頻発化が著しくなっています。2011年の東日本大震災を契機に「国土強靭化基本法」が制定(2013年)、その後も「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」(令和2年度〜)が継続的に推進されています。

また、2026年4月には国土強靭化に関する初の法定実施計画がスタートし、同年には防災庁が内閣直下に設置されました。国が最も力を入れている分野のひとつであり、技術士試験でも継続して問われるのは必然といえます。

■ 論文で抽出すべき課題の観点

  • 技術・構造面:老朽化したインフラの耐震性・耐水性不足、ハード整備の限界(想定を超える外力)
  • 人材・体制面:災害対応を担う技術者・地域建設業の担い手不足、技術継承の困難さ
  • 財政・計画面:防災投資の財源確保、維持管理コストとの両立、優先順位付けの難しさ
  • 情報・連携面:住民への避難情報伝達の遅れ、関係機関との連携体制の不備
  • 気候変動対応面:従来の設計基準(確率降雨量など)が想定を超える事象への対応

■ 論文で使えるキーワード・解決策の視点

分 野 キーワード・解決策
ハード対策 堤防強化・護岸整備、橋梁の耐震補強、盛土の安全対策、多重防御体制の構築
ソフト対策 ハザードマップの高度化、タイムライン防災、土地利用規制・移転促進
流域治水 河川・ダム・ため池・農地・都市が連携した流域全体での治水対策
グリーンインフラ 自然の力を活用した防災(湿地・森林・砂浜の保全・再生)
デジタル活用 センサー・AI・衛星データによるリアルタイム監視、防災DX
復旧・復興 BCP(事業継続計画)策定、迅速な復旧体制の整備、地域建設業の維持

■ 論文を書くときに注意すること

防災テーマは「ハード対策を書けばいい」と思いがちですが、試験では多面的な観点が求められます。ハード・ソフト・人材・財政・DXなど、複数の視点から課題を抽出し、解決策を示すことが合格論文の条件です。また、近年は「気候変動への適応」「流域治水」「グリーンインフラ」といった概念を絡めた出題が増えており、これらを正しく理解しておく必要があります。


② 生産性向上・DX・担い手確保

出題年:令和元年(Ⅰ-1)、令和2年(Ⅰ-2)、令和4年(Ⅰ-1)、令和7年(Ⅰ-1)
出題頻度:2〜3年に1回。近年は「DX」と「担い手」が一体化した出題が増加

■ なぜ繰り返し出題されるのか

建設業は今、深刻な人手不足に直面しています。建設就業者数はピーク時(1997年)の685万人から2023年には約479万人まで減少し、そのうち55歳以上が約36%を占める高齢化が進んでいます。一方で、社会インフラの整備・維持管理の需要は増え続けています。

この「人が減る×仕事は増える」という構造的矛盾を解決するために、国はi-Construction(2016年〜)、BIM/CIM推進、そして建設DXを強力に推進しています。令和6年には担い手3法(建設業法・入札契約適正化法・品質確保法)も改正され、処遇改善・働き方改革が法的にも求められる時代になりました。

■ 論文で抽出すべき課題の観点

  • 人材確保面:若者・女性の建設業離れ、入職者数の減少、3K(きつい・汚い・危険)イメージ
  • 技術継承面:熟練技術者の大量退職、暗黙知の継承困難、現場技術のデジタル化遅れ
  • 生産性面:建設現場のアナログ業務(紙図面・手作業測量・手書き帳票)の非効率
  • 処遇・環境面:賃金水準の低さ、長時間労働、週休2日の未実現
  • デジタル対応面:ICT活用の地域格差、中小建設業のDX導入コスト・人材不足

■ 論文で使えるキーワード・解決策の視点

分 野 キーワード・解決策
ICT施工 ドローン測量、3D-MG(マシンガイダンス)、自動化建機の活用
BIM/CIM 3Dモデルによる設計・施工・維持管理の一元化、2027年度本格導入
デジタル化 電子小黒板・遠隔臨場、AI検査、データ共有プラットフォーム
処遇改善 適正な設計労務単価の反映、週休2日工事の標準化、社会保険加入徹底
人材育成 女性・外国人材の活躍推進、インターンシップ・出前授業、資格取得支援
発注改善 適正工期の設定、平準化発注、余裕期間制度の活用

■ 論文を書くときに注意すること

このテーマでよくある失敗が、「人を増やす」方向の解決策を書いてしまうことです。担い手不足のテーマでは「今後、人が増えることは期待しにくい」という前提で論文を組み立てる必要があります。少ない人数でも現場を回せるような省力化・自動化・効率化の施策を中心に書くことが求められます。

また、「DX」と「担い手確保」は別々の話ではなく、「DXで生産性を上げることが担い手確保にもつながる」という一体的な視点を持つことが重要です。処遇改善→業界イメージ向上→入職者増加、というロジックも論文では有効な流れです。


③ インフラメンテナンス・老朽化対策

出題年:令和2年(Ⅰ-1)、令和5年(Ⅰ-1)
出題頻度:2〜3年に1回。今後も高頻度での出題が予想される

■ なぜ繰り返し出題されるのか

高度経済成長期(1960〜70年代)に集中整備された道路・橋梁・トンネル・ダム・下水道などの社会インフラが、今まさに一斉に老朽化を迎えています。道路橋を例にとると、建設から50年以上経過する橋梁の割合は2023年時点で約39%、2033年には約63%に達すると推計されています。

財政的な制約がある中でこの膨大な老朽化インフラを維持・更新していくことは、日本の土木行政における最重要課題のひとつです。国は「インフラ長寿命化基本計画」(2013年)を策定し、定期点検の義務化・個別施設計画の策定を進めてきました。令和5年の出題では「第2フェーズ」という言葉が使われており、メンテナンスの取り組みが新たな段階に入ったことを示しています。

■ 「第1フェーズ」と「第2フェーズ」の違い

試験対策上、この違いを正確に理解することが非常に重要です。

第1フェーズ(〜令和4年頃) 第2フェーズ(令和5年〜)
方針 点検・診断の実施と体制整備 予防保全への本格転換
課題 点検の義務化・定着 膨大な補修需要への対応・トータルコスト縮減
取り組み 個別施設計画の策定、予防保全の導入 計画的な予防保全の実行・加速
技術的焦点 点検技術・診断技術の向上 AI・ロボットによる点検効率化、集約・廃止・更新の判断

令和5年の試験では「第2フェーズ」が問われているため、「予防保全の推進」「アセットマネジメントの導入」は第1フェーズの解答として扱われます。第2フェーズの論文では、より一歩進んだ内容が必要です。

■ 論文で抽出すべき課題の観点

  • 財政・コスト面:補修・更新費用の急増と財政制約の両立、トータルコスト縮減の必要性
  • 人材・技術面:点検・診断できる技術者不足、地方自治体の技術力低下
  • 技術革新面:AI・センサー・ロボットを活用した効率的点検技術の普及・実装
  • 集約・廃止面:人口減少地域でのインフラの選択と集中、廃止・撤去の判断基準
  • データ管理面:点検データの一元管理・活用、BIM/CIMとの連携

■ 論文で使えるキーワード・解決策の視点

分野 キーワード・解決策
予防保全の推進 個別施設計画に基づく計画的な補修・更新、トータルコストの縮減・平準化
点検の効率化 ドローン・ロボット点検、センサー常時監視、AI画像診断の活用
選択と集中 人口動態・利用実態に応じたインフラの集約・廃止・機能転換の検討
技術者育成 地方自治体技術者の育成・支援、民間活用(包括的民間委託)
データ活用 点検データのデジタル化・データベース化、劣化予測AI の活用
財源確保 受益者負担の見直し、広域連携による効率化、国の財政支援の継続

■ 論文を書くときに注意すること

インフラメンテナンスのテーマで最も多い失敗は、第1フェーズの解答を第2フェーズの問題に書いてしまうことです。「点検を徹底する」「予防保全を推進する」という内容は、すでに取り組みが進んでいる内容であり、第2フェーズの解答としては不十分です。

第2フェーズでは、「膨大な老朽化施設をどうやって財政的・人材的制約の中で維持・更新していくか」「どのインフラを残し、どれを廃止・集約するか」という、より踏み込んだ判断・政策的な視点が求められます。


出題傾向から見えてくること

1. 国の施策・白書と出題が連動している

必須科目Ⅰの出題テーマは、その年の国土交通省白書・国土形成計画・法改正内容と高い連動性があります。令和6年の「拠点連結型国土」は第三次国土形成計画(令和5年策定)から、令和7年の「建設業の担い手」は令和6年の担い手3法改正から出題されました。試験勉強では白書を読む習慣が大切です。

2. 2問のテーマはセットで考えられている

Ⅰ-1とⅠ-2は対照的なテーマで構成されることが多いです。「地域づくり×防災」「防災×環境」「DX×カーボンニュートラル」という組み合わせです。どちらか一方だけの準備はリスクが高く、複数テーマへの対応が必要です。

3. 問われる構成はほぼ毎年同じ

テーマは変わっても、問いの構成は固定されています。

  1. 多面的な観点から課題を3つ抽出する
  2. 最重要課題を選び、複数の解決策を示す
  3. 解決策を実行した際の波及効果と懸念事項を述べる
  4. 技術者倫理・社会持続性の観点から必要な要件を述べる

この構成を頭に入れておけば、どのテーマが出ても対応できる「型」が身につきます。

今後の出題が予想されるテーマ

予想テーマ 関連キーワード
建設業の担い手確保・持続的発展 担い手3法改正・処遇改善・技術継承
カーボンニュートラル・脱炭素化 低炭素設計・グリーンインフラ・生物多様性
防災DX・デジタル田園都市 防災庁・GIS・衛星データ活用・センサー監視
BIM/CIM本格導入 3Dモデル・契約図書化・2027年度本格導入
人口減少・地域インフラの集約化 コンパクト+ネットワーク・インフラの選択と集中

まとめ:必須科目Ⅰ対策の3ステップ

STEP 1|過去問テーマを把握する
この記事の一覧を参考に、過去6年のテーマを頭に入れましょう。「どんなテーマが出やすいか」の感覚をつかむことが最初の一歩です。

STEP 2|国の施策・白書を読む
国土交通省の白書や最新の施策を確認する習慣をつけましょう。出題テーマは「今の社会課題」と直結しています。

STEP 3|解答の「型」で書く練習をする
課題抽出→解決策→波及効果→倫理、という4段構成で実際に論述の練習をしましょう。テーマが変わっても対応できる「型」を身につけることが合格への近道です。

次回の記事では、必須科目Ⅰで繰り返し出題されている「インフラメンテナンス」テーマについて、論文で使える知識を詳しくまとめます。

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