2026年1月、国土交通省が今後6年間のインフラ整備の指針となる第6次社会資本整備重点計画を閣議決定しました。老朽化対策・防災強化・グリーン化という時代の要請が凝縮されたこの計画は、技術士第二次試験(建設部門・土質及び基礎)でも出題される可能性が高いテーマです。本記事では、計画の骨格を土質及び基礎の視点から整理し、試験答案に直結する課題・解決策の組み立て方まで解説します。
第6次社会資本整備重点計画とは
第6次社会資本整備重点計画は、令和8年(2026年)1月16日に閣議決定された、今後の社会資本整備の方向性を示す国の基本計画です。計画期間は令和7年度(2025年度)〜令和12年度(2030年度)の6年間です。
社会資本整備重点計画法に基づき、道路・河川・砂防・地すべり・急傾斜地・港湾・下水道など、幅広いインフラを対象として、重点的・効果的・効率的に整備を推進するために策定されます。今回が第6次にあたり、第5次計画(令和3〜7年度)の後継計画として位置づけられています。
今次計画の最大の特徴は、第3次交通政策基本計画と一体的に策定されたことです。社会資本整備政策と交通政策を「車の両輪」として連携させ、共通のゴールとして「人口減少という危機を好機に変え、一人ひとりが豊かさと安心を実感できる持続可能な活力ある経済・社会を実現」を掲げています。
4つの重点目標
第6次計画では、以下の4つの重点目標が設定されています。
- 活力のある持続可能な地域社会の形成
- 強靱な国土が支える持続的で力強い経済社会
- インフラ分野が先導するグリーン社会の実現
- 戦略的・計画的な社会資本整備を支える基盤の強化
土質及び基礎の技術者として特に関連が深いのは、重点目標①と②です。以下で詳しく解説します。
土質及び基礎との関連性
重点目標①:地域社会の形成とインフラ老朽化対策
重点目標①では、インフラ老朽化対策の充実・強化が明記されています。令和6年(2024年)に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏まえ、老朽インフラの点検・調査をより技術的・重点的に実施していく方針が示されました。
土質及び基礎の観点から見ると、地下埋設管周辺の地盤沈下・空洞化調査、老朽化した基礎構造物の耐荷力評価、液状化リスクの再評価と対策などが求められる技術課題として挙げられます。また、まちづくりの計画と一体的にインフラの集約・再編を進める方針も示されており、地盤条件に応じた合理的な整備計画の立案が重要になります。
重点目標②:強靱な国土づくりと地盤・基礎対策
重点目標②では、激甚化する自然災害への対応として、ハード・ソフト一体の事前防災の強化が掲げられています。能登半島地震をはじめとする大規模災害の教訓を踏まえ、土地利用も含めた総合的な防災対策の推進が求められています。
土質及び基礎の専門技術者として関わる主な事項は次のとおりです。
- 液状化対策:能登半島地震での甚大な液状化被害を踏まえた既設構造物の被害軽減策
- 斜面・盛土の安定管理:降雨・地震に伴う崩壊リスクの評価と対策
- 砂防・急傾斜地対策:砂防堰堤等の整備や危険区域の管理
- 流域治水の推進:流域全体を俯瞰した土地利用と治水対策の連携
- 地すべり対策:モニタリング技術を活用した継続的な変位管理
想定問題と解答のポイント
技術士第二次試験(建設部門・土質及び基礎)では、第6次社会資本整備重点計画を背景とした問題が出題される可能性が高いと考えられます。以下に想定問題と解答作成のポイントをまとめます。
【想定問題】
令和8年(2026年)1月に閣議決定された第6次社会資本整備重点計画では、インフラ老朽化対策の充実・強化と、激甚化する自然災害への事前防災の推進が重点目標として掲げられている。これを踏まえ、土質及び基礎を専門とする技術者の立場から以下の問いに答えよ。
- 第6次社会資本整備重点計画が土質及び基礎分野に与える影響について、多面的な観点から3つ、技術的な課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで課題の内容を示せ。
- 抽出した課題のうち最も重要と考えるものを1つ挙げ、重要と考えた理由を述べ、その課題に対する3つの解決策を専門技術用語を交えて示せ。
- すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
解答作成のポイント
(1)課題の抽出(多面的な観点)
「多面的な観点」として、以下のような切り口から課題を整理するとよいでしょう。
- 安全・安心の観点:老朽化した盛土・擁壁・基礎杭の健全性評価と補強
- 防災・減災の観点:液状化・斜面崩壊・地すべりに対する事前防災の強化
- 維持管理・更新の観点:DXを活用した効率的な地盤調査・モニタリング体制の構築
- 担い手確保の観点:地盤技術者の不足と若手育成
- カーボンニュートラルの観点:地盤改良工における低炭素材料・工法の採用
(2)解決策(専門技術用語を活用)
解決策を記述する際は、以下のような専門用語を適切に用いることが評価につながります。
- 液状化対策:格子状地盤改良工法、グラベルドレーン工法、締固め工法(サンドコンパクションパイル工法)
- 斜面対策:抑止杭工法、グラウンドアンカー工法、植生による表層安定化
- 老朽化調査:地中レーダー探査(GPR)、弾性波探査、ボアホールカメラ調査
- モニタリング:GNSS変位計測、傾斜計・間隙水圧計を用いた自動観測、UASを活用した点群データ取得
- DX活用:BIM/CIMへの地盤情報の統合、地盤情報データベース(KuniJiban)の活用
(3)新たなリスクと対策
解決策を実施した場合でも生じうるリスクを論じることで、論文の完成度が高まります。たとえば、格子状地盤改良を広範囲に施工した場合の地下水流動への影響、モニタリング機器の誤作動による判断ミス、改良材の製造・輸送に伴うCO₂排出増加などが挙げられます。これらへの対策として、事前の環境影響評価実施や二重化・バックアップ体制の整備、低炭素型固化材の活用などを論じると説得力が増します。
試験対策まとめ
第6次社会資本整備重点計画は、2026年1月に閣議決定されたばかりの最新の政策文書です。試験では計画の内容そのものを問うのではなく、「この計画を踏まえて土質及び基礎の技術者としてどう行動するか」を問う形式で出題される可能性が高いと考えられます。
対策として押さえておきたいポイントは以下の3点です。
- 4つの重点目標の内容を自分の言葉で説明できるようにする
- 能登半島地震・八潮市道路陥没など直近の災害事例と計画の関連性を理解する
- 課題・解決策・リスクの三段構成で論文を組み立てる練習をする
国土交通省のウェブサイトでは第6次計画の概要資料(PDF)が無料公開されています。試験前に一度目を通しておくことをお勧めします。